熱中症救急搬送の記録的増加と医療インフラの脆弱性
判定:正しくない
### Topic
熱中症救急搬送の記録的増加と医療インフラの脆弱性
### Summary
総務省消防庁の調査によると、熱中症による救急搬送者数は2025年に初めて年間10万人を超え、2026年の一週間には4,580人に達し記録的な増加を示しました。この増加は、救急搬送困難事案の頻発や医療資源の逼迫を招き、気候変動や不適正利用が複合的に作用し、医療システムに深刻な負荷を与えています。
### Body
総務省消防庁の調査によると、2026年7月6日から12日までの1週間に全国で熱中症により救急搬送された人数は4,580人に達し、これは前の週の約3倍以上の増加を示した。この期間中に7人が死亡し、105人が重症と診断されている。同庁は平成20年(2008年)から熱中症による救急搬送人員の調査を実施しており、熱中症による全国の救急搬送者数(5月~9月)は2025年に100,510人を記録し、調査開始以来初めて10万人を超過した。これは2015年の55,852人と比較して約1.8倍の増加である。東京消防庁管内では、過去5年間(各年6月から9月まで)に熱中症により33,660人が救急搬送されており、2025年の熱中症による救急搬送人員は9,125人で、過去最多だった2024年の7,996人を超え、過去最多を更新した。特に2025年8月は過去5年間で最も多い3,304人が救急搬送され、9月も過去最多の844人が搬送された。救急要請時の気温は32°C台と33°C台の時に1,000人以上が救急搬送されており、28°Cから35°C、湿度は50%から80%の範囲で救急搬送人員が多く分布する。時間帯別では12時台が977人と最も多く、11時台から15時台は800人以上と高い水準で推移する。年代別では80歳代が2,065人と最も多く、次いで70歳代が1,635人であり、人口10万人あたりの救急搬送人員では70歳代から増加し、90歳代が最多である。気象庁の観測データは、全国の猛暑日(日最高気温35°C以上)の年間日数が増加傾向にあることを示し、1910年から2025年までの統計期間で100年あたり2.9日の増加が確認されている。最近30年間(1996年~2025年)の猛暑日の平均年間日数(約3.2日)は、統計期間最初の30年間(1910年~1939年)の平均年間日数(約0.8日)と比べて約4.2倍に増加した。福岡県太宰府市では、2024年夏に7月19日から8月27日にかけて40日間連続で最高気温35°C以上の猛暑日を記録し、これは日本の気象観測史上最長の連続猛暑日記録である。熱中症は、高温環境下での体温調節機能不全により体内に熱がこもる状態を指し、屋外だけでなく室内でも発症し死亡に至る可能性がある。症状にはめまい、大量発汗、立ちくらみ、筋肉痛、生あくび、筋肉のこむら返りなどがある。意識がない場合は即座に救急車を要請し、意識がある場合は涼しい場所への移動、衣服の緩和、身体冷却、水分・塩分補給が推奨される。医療機関では、核心温が40°C以上の高熱の場合、気道確保、呼吸・循環・尿量・核心温の監視を行いながら、38.5°Cまで冷却することを目標に、体表面冷却や冷やした輸液の急速静注が実施され、重症例は集中治療室(ICU)で管理される。厚生労働省は、熱中症の早期発見と重篤化防止のため、2025年6月1日より、特定の暑熱環境下での作業において、熱中症の自覚症状がある作業者や発見者による報告体制の整備、および作業からの離脱、身体冷却、医療機関への搬送などの措置・手順の作成と周知を義務化した。
熱中症対策の推進において、総務省消防庁は熱中症予防啓発取組事例集を公表し、全国の消防本部に対し、独自の予防啓発活動を積極的に展開するよう促している。環境省もまた、地方公共団体における効果的な熱中症対策モデル事業の成果として、「地域における熱中症対策の先進的な取組事例集」を作成し、地方自治体による対策強化を期待している。このモデル事業では、小中学校での給食時間中の熱中症予防放送や、小学生向けバスケットボール教室での予防講話といった具体的な啓発活動が実施されている。さらに、移動販売車と連携し、買い物弱者支援事業の利用者である高齢者へ熱中症予防啓発チラシを配布する取り組みも展開されている。企業レベルでは、建設現場で「冷却グッズ貸出制度」を導入した結果、ネッククーラー、冷却スプレー、空調服の貸出により、効果を実感し自発的に持参する社員が増加した事例が報告されている。工場における熱中症対策としては、チラー水冷式身体冷却システムが作業員の体温を直接下げることで熱中症リスクを軽減し、作業効率向上に寄与するとされ、防爆エリアや粉塵発生現場でも活用されている。厚生労働省は、熱中症予防のための情報・資料サイトを公開し、症状、予防法、対処法をまとめたリーフレットを地方自治体等を通じて普及啓発している。また、地域の高齢者や障害者等の支援が必要な人々への熱中症対策として、広報誌、ケーブルテレビ、ラジオ、メール、SNS、防災無線、公用車による情報発信や、熱中症予防物品の配布など、全国の自治体の参考となる事例を収集・紹介している。「熱中症ゼロへ」プロジェクトは2013年に発足し、活動規模を拡大しており、2023年には「熱中症予防啓発活動の今までとこれからに向けて」ページを公開し、専門家やPR大使からのコメントを掲載している。高知県幡多地域の6市町村と大塚製薬などは連携し、熱中症による搬送患者数「ゼロ」を目標に掲げた対策会議を開催し、四万十市では市役所や金融機関など45か所を一時的な「クーリングシェルター」として指定している。
救急搬送システムは、救急搬送困難事案の増加という構造的課題に直面している。これは、救急隊が病院への受け入れ依頼を4回以上実施し、現場到着から出発までに30分以上を要する事案と定義される。この増加の主要因は、救急搬送件数の増加と救急病院の受け入れ状況の逼迫にある。山形市消防本部では2025年の救急出動件数が13,328件に達し、統計開始以来過去最多を記録した。病院側からは「他の患者に対応している」「入院ベッドの空きがない」といった理由で受け入れを断られるケースが頻発しており、救急隊が現場を1時間以上出発できない事態も珍しくない。新型コロナウイルスオミクロン株の「第6波」感染拡大時には、2022年1月24日~30日の1週間で全国52の消防局・消防本部で計5,303件の救急搬送困難事案が発生し、過去最多の「第5波」の3,361件を大幅に上回った。医師の働き方改革に伴う大学病院等からの非常勤医派遣制限は、初期および二次救急医療機関での患者受け入れ減少を招き、救急搬送困難事案をさらに増加させる懸念がある。また、救急搬送困難事案の定義が消防本部間で統一されていない現状があり、今後のデータ集計の観点から定義の統一化が望ましいとされている。地域差も顕著であり、感染拡大期には1ヶ月間で1,791件発生した地域も存在する。
気候変動は「今、ここにある健康危機」と認識され、年間54万人以上が極度の熱波などで死亡している深刻な影響が確認されている。世界保健機関(WHO)は、気候変動が2030年~2050年の間に、熱中症や感染症、栄養不良などを通じて年間約25万人の追加死亡を引き起こす可能性があると警告している。世界の病院の12分の1が気候変動による災害で閉鎖するリスクに直面しており、医療施設の浸水、電力網の寸断、医薬品サプライチェーンの崩壊といったインフラ障害により、治療機会そのものが失われる深刻な問題が指摘されている。医療システム自体が気候変動に対して脆弱な構造を抱え、世界の医療セクターは温室効果ガス排出量の約4.4%を占める一方で、気候由来の災害による影響を最も直接的に受ける分野の一つである。高齢者の救急搬送増加に伴い、「病院に入院する予定だがタクシー代がかかるので救急車を呼んだ」や「眠れなくて誰かに話を聞いてほしくて救急車を呼んだ」といった不適正な利用も問題視されている。このような不適正利用は、必要な救急車の台数不足を招き、救急車の現場到着平均所要時間や病院収容までの平均時間の増加につながっている。2009年から2019年の10年間で、現場到着平均所要時間は7.7分から8.7分へ1分延伸し、病院収容までの平均時間は35分から39.5分へ4.5分増加した。気候変動と化石燃料の使用に伴う大気汚染による健康被害と医療費は、米国で年間8,200億ドル(約90兆円)を超えると推定されており、気候変動対策を強化しなければ今後数年間で医療費が大幅に増える可能性があると警鐘が鳴らされている。気候変動は、経済的に脆弱な人々、一部の有色人種、移民、先住民族、子ども、妊婦、老人、屋外労働者、障がい者、既往症・慢性疾患を抱える人々など、社会的に立場の弱い人々に特に大きなリスクをもたらす。
### Verification
総務省消防庁は平成20年(2008年)から熱中症による救急搬送人員の調査を実施している。気象庁は全国の猛暑日(日最高気温35°C以上)の年間日数の観測データを提供している。厚生労働省は、特定の暑熱環境下での作業における熱中症の自覚症状報告体制の整備と措置手順の作成・周知を義務化し、熱中症の早期発見と重篤化防止を図っている。
### Supplement
熱中症は、高温環境下での体温調節機能不全により体内に熱がこもる状態を指し、屋外だけでなく室内でも発症し死亡に至る可能性がある。症状にはめまい、大量発汗、立ちくらみ、筋肉痛、生あくび、筋肉のこむら返りなどがある。意識がない場合は即座に救急車を要請し、意識がある場合は涼しい場所への移動、衣服の緩和、身体冷却、水分・塩分補給が推奨される。医療機関では、核心温が40°C以上の高熱の場合、気道確保、呼吸・循環・尿量・核心温の監視を行いながら、38.5°Cまで冷却することを目標に、体表面冷却や冷やした輸液の急速静注が実施され、重症例は集中治療室(ICU)で管理される。
救急搬送困難事案は、救急隊が病院への受け入れ依頼を4回以上実施し、現場到着から出発までに30分以上を要する事案と定義される。
### Evidence
* 2026年7月6日から12日までの1週間に全国で熱中症により救急搬送された人数は4,580人、7人死亡、105人が重症。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 熱中症による全国の救急搬送者数(5月~9月)は2025年に100,510人(2015年の55,852人から約1.8倍増)。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 東京消防庁管内での過去5年間(6月~9月)の熱中症による救急搬送は33,660人。2025年は9,125人(過去最多を更新)。2025年8月は3,304人、9月は844人。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 救急要請時の気温は32°C台と33°C台で1,000人以上が搬送。28°Cから35°C、湿度50%から80%で搬送が多い。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 時間帯別では12時台が977人と最も多く、11時台から15時台は800人以上。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 年代別では80歳代が2,065人、70歳代が1,635人。人口10万人あたりでは90歳代が最多。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 猛暑日(日最高気温35°C以上)の年間日数は1910年から2025年で100年あたり2.9日増加。最近30年間(1996年~2025年)の平均約3.2日は、統計期間最初の30年間(1910年~1939年)の平均約0.8日と比べて約4.2倍に増加。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 福岡県太宰府市で2024年夏に7月19日から8月27日にかけて40日間連続で最高気温35°C以上の猛暑日を記録。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 医療機関での熱中症治療目標は核心温38.5°Cまで冷却。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 厚生労働省は2025年6月1日より、特定の暑熱環境下作業での熱中症報告体制整備などを義務化。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 総務省消防庁は熱中症予防啓発取組事例集を公表。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 環境省は「地域における熱中症対策の先進的な取組事例集」を作成。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 企業レベルでの「冷却グッズ貸出制度」導入事例。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 工場でのチラー水冷式身体冷却システム活用事例。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 厚生労働省は熱中症予防のための情報・資料サイトを公開。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 「熱中症ゼロへ」プロジェクトは2013年に発足、2023年に「熱中症予防啓発活動の今までとこれからに向けて」ページ公開。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 四万十市では45か所を一時的な「クーリングシェルター」に指定。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 救急搬送困難事案の増加。山形市消防本部で2025年の救急出動件数が13,328件。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 新型コロナウイルスオミクロン株「第6波」時の2022年1月24日~30日の1週間で全国52の消防局・消防本部で計5,303件の救急搬送困難事案発生。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 感染拡大期には1ヶ月間で1,791件発生した地域も存在。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 気候変動により年間54万人以上が極度の熱波などで死亡。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* WHOは気候変動が2030年~2050年の間に年間約25万人の追加死亡を引き起こす可能性を警告。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 世界の病院の12分の1が気候変動による災害で閉鎖するリスク。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 世界の医療セクターは温室効果ガス排出量の約4.4%を占める。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 2009年から2019年の10年間で、救急車の現場到着平均所要時間は7.7分から8.7分へ1分延伸し、病院収容までの平均時間は35分から39.5分へ4.5分増加。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 気候変動と大気汚染による健康被害と医療費は米国で年間8,200億ドル(約90兆円)を超えると推定。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 気候変動は、経済的に脆弱な人々、一部の有色人種、移民、先住民族、子ども、妊婦、老人、屋外労働者、障がい者、既往症・慢性疾患を抱える人々など、社会的に立場の弱い人々に特に大きなリスクをもたらす。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
熱中症救急搬送の記録的増加と医療インフラの脆弱性
### Summary
総務省消防庁の調査によると、熱中症による救急搬送者数は2025年に初めて年間10万人を超え、2026年の一週間には4,580人に達し記録的な増加を示しました。この増加は、救急搬送困難事案の頻発や医療資源の逼迫を招き、気候変動や不適正利用が複合的に作用し、医療システムに深刻な負荷を与えています。
### Body
総務省消防庁の調査によると、2026年7月6日から12日までの1週間に全国で熱中症により救急搬送された人数は4,580人に達し、これは前の週の約3倍以上の増加を示した。この期間中に7人が死亡し、105人が重症と診断されている。同庁は平成20年(2008年)から熱中症による救急搬送人員の調査を実施しており、熱中症による全国の救急搬送者数(5月~9月)は2025年に100,510人を記録し、調査開始以来初めて10万人を超過した。これは2015年の55,852人と比較して約1.8倍の増加である。東京消防庁管内では、過去5年間(各年6月から9月まで)に熱中症により33,660人が救急搬送されており、2025年の熱中症による救急搬送人員は9,125人で、過去最多だった2024年の7,996人を超え、過去最多を更新した。特に2025年8月は過去5年間で最も多い3,304人が救急搬送され、9月も過去最多の844人が搬送された。救急要請時の気温は32°C台と33°C台の時に1,000人以上が救急搬送されており、28°Cから35°C、湿度は50%から80%の範囲で救急搬送人員が多く分布する。時間帯別では12時台が977人と最も多く、11時台から15時台は800人以上と高い水準で推移する。年代別では80歳代が2,065人と最も多く、次いで70歳代が1,635人であり、人口10万人あたりの救急搬送人員では70歳代から増加し、90歳代が最多である。気象庁の観測データは、全国の猛暑日(日最高気温35°C以上)の年間日数が増加傾向にあることを示し、1910年から2025年までの統計期間で100年あたり2.9日の増加が確認されている。最近30年間(1996年~2025年)の猛暑日の平均年間日数(約3.2日)は、統計期間最初の30年間(1910年~1939年)の平均年間日数(約0.8日)と比べて約4.2倍に増加した。福岡県太宰府市では、2024年夏に7月19日から8月27日にかけて40日間連続で最高気温35°C以上の猛暑日を記録し、これは日本の気象観測史上最長の連続猛暑日記録である。熱中症は、高温環境下での体温調節機能不全により体内に熱がこもる状態を指し、屋外だけでなく室内でも発症し死亡に至る可能性がある。症状にはめまい、大量発汗、立ちくらみ、筋肉痛、生あくび、筋肉のこむら返りなどがある。意識がない場合は即座に救急車を要請し、意識がある場合は涼しい場所への移動、衣服の緩和、身体冷却、水分・塩分補給が推奨される。医療機関では、核心温が40°C以上の高熱の場合、気道確保、呼吸・循環・尿量・核心温の監視を行いながら、38.5°Cまで冷却することを目標に、体表面冷却や冷やした輸液の急速静注が実施され、重症例は集中治療室(ICU)で管理される。厚生労働省は、熱中症の早期発見と重篤化防止のため、2025年6月1日より、特定の暑熱環境下での作業において、熱中症の自覚症状がある作業者や発見者による報告体制の整備、および作業からの離脱、身体冷却、医療機関への搬送などの措置・手順の作成と周知を義務化した。
熱中症対策の推進において、総務省消防庁は熱中症予防啓発取組事例集を公表し、全国の消防本部に対し、独自の予防啓発活動を積極的に展開するよう促している。環境省もまた、地方公共団体における効果的な熱中症対策モデル事業の成果として、「地域における熱中症対策の先進的な取組事例集」を作成し、地方自治体による対策強化を期待している。このモデル事業では、小中学校での給食時間中の熱中症予防放送や、小学生向けバスケットボール教室での予防講話といった具体的な啓発活動が実施されている。さらに、移動販売車と連携し、買い物弱者支援事業の利用者である高齢者へ熱中症予防啓発チラシを配布する取り組みも展開されている。企業レベルでは、建設現場で「冷却グッズ貸出制度」を導入した結果、ネッククーラー、冷却スプレー、空調服の貸出により、効果を実感し自発的に持参する社員が増加した事例が報告されている。工場における熱中症対策としては、チラー水冷式身体冷却システムが作業員の体温を直接下げることで熱中症リスクを軽減し、作業効率向上に寄与するとされ、防爆エリアや粉塵発生現場でも活用されている。厚生労働省は、熱中症予防のための情報・資料サイトを公開し、症状、予防法、対処法をまとめたリーフレットを地方自治体等を通じて普及啓発している。また、地域の高齢者や障害者等の支援が必要な人々への熱中症対策として、広報誌、ケーブルテレビ、ラジオ、メール、SNS、防災無線、公用車による情報発信や、熱中症予防物品の配布など、全国の自治体の参考となる事例を収集・紹介している。「熱中症ゼロへ」プロジェクトは2013年に発足し、活動規模を拡大しており、2023年には「熱中症予防啓発活動の今までとこれからに向けて」ページを公開し、専門家やPR大使からのコメントを掲載している。高知県幡多地域の6市町村と大塚製薬などは連携し、熱中症による搬送患者数「ゼロ」を目標に掲げた対策会議を開催し、四万十市では市役所や金融機関など45か所を一時的な「クーリングシェルター」として指定している。
救急搬送システムは、救急搬送困難事案の増加という構造的課題に直面している。これは、救急隊が病院への受け入れ依頼を4回以上実施し、現場到着から出発までに30分以上を要する事案と定義される。この増加の主要因は、救急搬送件数の増加と救急病院の受け入れ状況の逼迫にある。山形市消防本部では2025年の救急出動件数が13,328件に達し、統計開始以来過去最多を記録した。病院側からは「他の患者に対応している」「入院ベッドの空きがない」といった理由で受け入れを断られるケースが頻発しており、救急隊が現場を1時間以上出発できない事態も珍しくない。新型コロナウイルスオミクロン株の「第6波」感染拡大時には、2022年1月24日~30日の1週間で全国52の消防局・消防本部で計5,303件の救急搬送困難事案が発生し、過去最多の「第5波」の3,361件を大幅に上回った。医師の働き方改革に伴う大学病院等からの非常勤医派遣制限は、初期および二次救急医療機関での患者受け入れ減少を招き、救急搬送困難事案をさらに増加させる懸念がある。また、救急搬送困難事案の定義が消防本部間で統一されていない現状があり、今後のデータ集計の観点から定義の統一化が望ましいとされている。地域差も顕著であり、感染拡大期には1ヶ月間で1,791件発生した地域も存在する。
気候変動は「今、ここにある健康危機」と認識され、年間54万人以上が極度の熱波などで死亡している深刻な影響が確認されている。世界保健機関(WHO)は、気候変動が2030年~2050年の間に、熱中症や感染症、栄養不良などを通じて年間約25万人の追加死亡を引き起こす可能性があると警告している。世界の病院の12分の1が気候変動による災害で閉鎖するリスクに直面しており、医療施設の浸水、電力網の寸断、医薬品サプライチェーンの崩壊といったインフラ障害により、治療機会そのものが失われる深刻な問題が指摘されている。医療システム自体が気候変動に対して脆弱な構造を抱え、世界の医療セクターは温室効果ガス排出量の約4.4%を占める一方で、気候由来の災害による影響を最も直接的に受ける分野の一つである。高齢者の救急搬送増加に伴い、「病院に入院する予定だがタクシー代がかかるので救急車を呼んだ」や「眠れなくて誰かに話を聞いてほしくて救急車を呼んだ」といった不適正な利用も問題視されている。このような不適正利用は、必要な救急車の台数不足を招き、救急車の現場到着平均所要時間や病院収容までの平均時間の増加につながっている。2009年から2019年の10年間で、現場到着平均所要時間は7.7分から8.7分へ1分延伸し、病院収容までの平均時間は35分から39.5分へ4.5分増加した。気候変動と化石燃料の使用に伴う大気汚染による健康被害と医療費は、米国で年間8,200億ドル(約90兆円)を超えると推定されており、気候変動対策を強化しなければ今後数年間で医療費が大幅に増える可能性があると警鐘が鳴らされている。気候変動は、経済的に脆弱な人々、一部の有色人種、移民、先住民族、子ども、妊婦、老人、屋外労働者、障がい者、既往症・慢性疾患を抱える人々など、社会的に立場の弱い人々に特に大きなリスクをもたらす。
### Verification
総務省消防庁は平成20年(2008年)から熱中症による救急搬送人員の調査を実施している。気象庁は全国の猛暑日(日最高気温35°C以上)の年間日数の観測データを提供している。厚生労働省は、特定の暑熱環境下での作業における熱中症の自覚症状報告体制の整備と措置手順の作成・周知を義務化し、熱中症の早期発見と重篤化防止を図っている。
### Supplement
熱中症は、高温環境下での体温調節機能不全により体内に熱がこもる状態を指し、屋外だけでなく室内でも発症し死亡に至る可能性がある。症状にはめまい、大量発汗、立ちくらみ、筋肉痛、生あくび、筋肉のこむら返りなどがある。意識がない場合は即座に救急車を要請し、意識がある場合は涼しい場所への移動、衣服の緩和、身体冷却、水分・塩分補給が推奨される。医療機関では、核心温が40°C以上の高熱の場合、気道確保、呼吸・循環・尿量・核心温の監視を行いながら、38.5°Cまで冷却することを目標に、体表面冷却や冷やした輸液の急速静注が実施され、重症例は集中治療室(ICU)で管理される。
救急搬送困難事案は、救急隊が病院への受け入れ依頼を4回以上実施し、現場到着から出発までに30分以上を要する事案と定義される。
### Evidence
* 2026年7月6日から12日までの1週間に全国で熱中症により救急搬送された人数は4,580人、7人死亡、105人が重症。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 熱中症による全国の救急搬送者数(5月~9月)は2025年に100,510人(2015年の55,852人から約1.8倍増)。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 東京消防庁管内での過去5年間(6月~9月)の熱中症による救急搬送は33,660人。2025年は9,125人(過去最多を更新)。2025年8月は3,304人、9月は844人。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 救急要請時の気温は32°C台と33°C台で1,000人以上が搬送。28°Cから35°C、湿度50%から80%で搬送が多い。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 時間帯別では12時台が977人と最も多く、11時台から15時台は800人以上。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 年代別では80歳代が2,065人、70歳代が1,635人。人口10万人あたりでは90歳代が最多。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 猛暑日(日最高気温35°C以上)の年間日数は1910年から2025年で100年あたり2.9日増加。最近30年間(1996年~2025年)の平均約3.2日は、統計期間最初の30年間(1910年~1939年)の平均約0.8日と比べて約4.2倍に増加。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 福岡県太宰府市で2024年夏に7月19日から8月27日にかけて40日間連続で最高気温35°C以上の猛暑日を記録。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 医療機関での熱中症治療目標は核心温38.5°Cまで冷却。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 厚生労働省は2025年6月1日より、特定の暑熱環境下作業での熱中症報告体制整備などを義務化。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 総務省消防庁は熱中症予防啓発取組事例集を公表。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 環境省は「地域における熱中症対策の先進的な取組事例集」を作成。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 企業レベルでの「冷却グッズ貸出制度」導入事例。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 工場でのチラー水冷式身体冷却システム活用事例。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 厚生労働省は熱中症予防のための情報・資料サイトを公開。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 「熱中症ゼロへ」プロジェクトは2013年に発足、2023年に「熱中症予防啓発活動の今までとこれからに向けて」ページ公開。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 四万十市では45か所を一時的な「クーリングシェルター」に指定。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 救急搬送困難事案の増加。山形市消防本部で2025年の救急出動件数が13,328件。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 新型コロナウイルスオミクロン株「第6波」時の2022年1月24日~30日の1週間で全国52の消防局・消防本部で計5,303件の救急搬送困難事案発生。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 感染拡大期には1ヶ月間で1,791件発生した地域も存在。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 気候変動により年間54万人以上が極度の熱波などで死亡。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* WHOは気候変動が2030年~2050年の間に年間約25万人の追加死亡を引き起こす可能性を警告。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 世界の病院の12分の1が気候変動による災害で閉鎖するリスク。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 世界の医療セクターは温室効果ガス排出量の約4.4%を占める。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 2009年から2019年の10年間で、救急車の現場到着平均所要時間は7.7分から8.7分へ1分延伸し、病院収容までの平均時間は35分から39.5分へ4.5分増加。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 気候変動と大気汚染による健康被害と医療費は米国で年間8,200億ドル(約90兆円)を超えると推定。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))
* 気候変動は、経済的に脆弱な人々、一部の有色人種、移民、先住民族、子ども、妊婦、老人、屋外労働者、障がい者、既往症・慢性疾患を抱える人々など、社会的に立場の弱い人々に特に大きなリスクをもたらす。([https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html](https://www.asahi.com/articles/ASR7LXXXXX.html))