技能実習制度の廃止と育成就労制度への移行:国際貢献と人権侵害の狭間

判定:正しくない

### Topic
技能実習制度の廃止と育成就労制度への移行:国際貢献と人権侵害の狭間

### Summary
1993年に国際貢献を目的に導入された技能実習制度は、2027年4月1日から育成就労制度へ移行し、2030年までに廃止される予定です。本制度は、開発途上国への技術移転を謳う一方で、国内の人手不足を補う労働力として利用され、ハラスメント、低賃金、転籍制限といった人権侵害が指摘され、2023年には過去最多の失踪者9,753人を記録するなど、その目的と実態の乖離が深刻化しています。新制度は人材確保と育成を目的とし、日本語能力や育成就労計画の義務付け、一定期間後の転籍容認を目指しますが、その条件の不明確さへの批判も存在します。

### Body
技能実習制度は1993年に導入され、開発途上国への技能、技術、知識の移転を通じた国際貢献を目的としていた。2017年11月1日には「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)」が施行され、これに基づき外国人技能実習機構が設立されたことで、新たな制度運用が開始された。しかし、この制度は2027年4月1日から新たに「育成就労制度」へ移行することが決定しており、2030年までに廃止される予定である。制度の区分は企業単独型と団体監理型に大別され、それぞれ1年目の「技能実習1号」、2・3年目の「技能実習2号」、4・5年目の「技能実習3号」に分けられる。令和6年(2024年)時点で約46万人の外国人が技能実習生として日本に在留しており、2024年10月末時点では外国人労働者数が過去最高の230万人を突破し、そのうち技能実習生は約47万人を占める。技能実習生は、日本において企業や個人事業主等の実習実施者と雇用関係を結び、出身国で修得が困難な技能等の修得・習熟・熟達を図ることを目的とし、期間は最長5年とされている。この制度の所管官庁は、法務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省、農林水産省など複数にまたがっていた。2024年6月14日には、技能実習制度を育成就労制度に改める法律が国会で可決成立した。

技能実習制度は、開発途上国などから外国人を受け入れ、日本の技術や技能を移転し、人材育成を通じて国際貢献を行うことを目的として運用されてきた。2017年の技能実習法施行により、優良な監理団体・実習実施者での実習期間が3年から5年に延長され、受け入れ人数枠も拡大されたほか、対象職種の拡大も実施された。新制度である育成就労制度は、日本の人手不足分野における「人材の確保」と、特定技能1号水準への「計画的な育成」を明確な目的としている。育成就労制度では、外国人材の育成とキャリア形成を重視し、特定技能への移行も可能となるため、企業にとっては安定した人材確保と定着率向上が期待できる。また、就労開始前から一定の日本語能力(A1相当以上)が求められ、各段階で日本語能力・技能水準が段階的に定められる。さらに、外国人ごとに3年間の「育成就労計画」を作成し、外国人育成就労機構による認定を受けることが義務付けられる。育成就労制度は、労働力不足に苦しむ国内企業にとって、長期的な人材育成の観点から大きな期待が寄せられている。

技能実習制度は「国際協力」を目的とした制度であるにもかかわらず、実際の運用では日本国内の人手不足を補う労働力として技能実習生が活用されるケースが多く、制度の目的と実態が大きく乖離しているとの批判が根強い。技能実習生の失踪問題は深刻であり、法務省出入国在留管理庁のデータによると、令和5年(2023年)には9,753人と過去最多を記録した。失踪に至る背景には、受け入れ企業でのハラスメントや人権侵害、違法な低賃金・長時間労働といった不当な待遇が存在する。原則として転籍(受け入れ先の変更)が認められていない点が大きな問題とされており、劣悪な労働環境に置かれても職場を変えることができず、結果として失踪を選ぶ技能実習生が後を絶たなかった。これは憲法の職業選択の自由を否定する仕組みであるとの指摘もある。技能実習生は多額の手数料(送出機関の平均54万円)を払って日本に来ており、その借金を返すために働かなければならない状況にある。この借金構造と転籍制限が、実習生を使用者に従属させる力学を生んでいる。パスポートの取り上げは禁止されているにもかかわらず、失踪防止策としてパスポートを預かる企業があり、事実上の強制労働につながるとして社会問題化した。いかなる理由であっても実習実施機関がパスポートを保管することは禁止されており、違反した場合は5年間技能実習生の受け入れが停止される罰則がある。国連人種差別撤廃委員会やアメリカ合衆国国務省の人身売買報告書など、国内外の国際機関から技能実習制度に対する批判や勧告がなされている。アメリカ国務省は2021年7月、世界の人身売買に関する報告書の中で日本の技能実習制度に言及し、実習生の支援に取り組む弁護士を「ヒーロー」として認定した [アメリカ国務省の人身売買報告書](https://www.hrw.org/world-report/2025/country-chapters/japan)。労働組合や弁護士など外部の支援なしに、技能実習生が自ら権利救済を図ることは困難な状況にある。厚生労働省の調査では、2005年に外国人研修・実習制度で来日した外国人労働者が働く868事業所のうち、8割にあたる694事業所で長時間労働や基準外賃金の未払いなどの違反があった。技能実習制度は「現代的奴隷制度」と国際的に批判されている [現代的奴隷制度との批判](https://www.hrw.org/world-report/2025/country-chapters/japan)。育成就労制度においても、1年以上の一定期間働けば転籍が認められるとされているが、その条件が依然として不明確だとの批判もある。

### Verification
法務省出入国在留管理庁のデータによると、令和5年(2023年)には9,753人の技能実習生が失踪し、過去最多を記録した。厚生労働省の調査では、2005年に外国人研修・実習制度で来日した外国人労働者が働く868事業所のうち、8割にあたる694事業所で長時間労働や基準外賃金の未払いなどの違反があった。

### Supplement
技能実習制度は1993年に導入され、開発途上国への技能、技術、知識の移転を通じた国際貢献を目的としていた。2017年11月1日には「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)」が施行され、外国人技能実習機構が設立された。制度の所管官庁は、法務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省、農林水産省など複数にまたがっていた。制度区分は企業単独型と団体監理型に大別され、「技能実習1号」(1年目)、「技能実習2号」(2・3年目)、「技能実習3号」(4・5年目)に分けられる。育成就労制度では、就労開始前から一定の日本語能力(A1相当以上)が求められ、各段階で日本語能力・技能水準が段階的に定められる。また、外国人ごとに3年間の「育成就労計画」を作成し、外国人育成就労機構による認定を受けることが義務付けられる。

### Evidence
* アメリカ合衆国国務省の人身売買報告書 (2021年7月): [https://www.hrw.org/world-report/2025/country-chapters/japan](https://www.hrw.org/world-report/2025/country-chapters/japan)
* 現代的奴隷制度との批判: [https://www.hrw.org/world-report/2025/country-chapters/japan](https://www.hrw.org/world-report/2025/country-chapters/japan)

根拠・参照文献