顔写真なし健康保険証の課題:不正利用リスクとシステムへの多重負担

判定:正しくない

### Topic
顔写真なし健康保険証の課題:不正利用リスクとシステムへの多重負担

### Summary
顔写真のない健康保険証は、本人確認の不十分さから不正利用や無資格受診の潜在的リスクを抱え、年間数百億円から1,000億円規模の潜在的被害が推測されています。これにより、医療機関の負担増やシステム運用コストの増大、国民皆保険制度の財源損失や信頼低下といった広範な問題が生じています。

### Body
顔写真のない健康保険証は、本人確認の不十分さから他者による不正利用や無資格受診の潜在的リスクを内包しています。公式には年間数十件の不正利用が把握されていますが、実際の潜在的被害額は数百億から1,000億円規模に上ると推測されています。厚生労働省は「なりすまし」などの不正利用に関する公式報告を示していませんが、2003年の厚生労働科学研究報告書では、保険情報の誤りや不正使用(主に事務的な記載誤りや資格停止後の利用)の処理経費が全国で年間1,000億円を超えると推定されています。

この本人確認の不備は、医療システムに具体的な負担をもたらしています。平井卓也元デジタル相の指摘によれば、紙の健康保険証の本人確認ができないことを理由に、年間約500万件のレセプトが医療機関で差し戻されています。他人の保険証を借りて受診する行為は詐欺罪に該当し、実際に2022年には大阪で約2億円の不正利益を得ていた組織的事件が摘発されています。不正利用が発覚した場合、医療機関が保険者に対して診療報酬を請求できず、その損害を負担する可能性があり、本人確認の厳格化が差別につながるという懸念から窓口での確認が不十分になるケースもあります。

システム全体の運用コストも増大しており、保険情報の誤りや不正使用の処理費用が年間1,000億円を超えると推定されることに加え、レセプト差し戻しが医療機関や審査支払機関の事務処理を増加させています。マイナンバーカードと健康保険証の一体化(マイナ保険証)の推進も、システム改修、医療機関での対応、トラブル対応に多大なリソースを消費しています。

これらの問題には、費用対効果の観点からシステム的なトレードオフが存在します。不正利用の完全排除には膨大な社会的コストがかかり、社会全体の便益を低下させる可能性があるとの指摘があります。政府が社会保険料滞納者への差し押さえに巨額を投じる一方で、なりすまし等の不正利用対策の費用対効果は疑問視されています。マイナ保険証への移行と不正利用対策に焦点が当たることで、国民皆保険制度の根本的な課題解決や、より広範な医療制度改革へのリソース配分が遅れる懸念もあります。

結果として、不正利用や無資格受診が放置されることで、国民皆保険制度の財源が不当に消費され、保険料の上昇や制度の持続可能性、国民の信頼が損なわれるリスクがあります。医療機関が診療報酬を請求できないことによる経営悪化は、特に地方の医療提供体制維持を困難にする可能性があり、マイナ保険証移行時のデータ誤登録や電子証明書の期限切れといったトラブルは、医療アクセスを阻害し、国民の不安を増大させています。

### Verification
厚生労働省は、他人になりすまして健康保険証を使う「不正利用」の頻度や状況について公式な報告を示していません。年間数百億から1,000億円規模とされる潜在的被害額は推測であり、2003年の厚生労働科学研究報告書による年間1,000億円超の経費は、主に保険証番号の単純な記載誤りや資格停止後の利用によるもので、「なりすまし」に特化したものではないと明記されています。

### Supplement
医療機関の窓口では、日本人と外国人に対する本人確認の厳格さに差を設けることが差別につながるという懸念から、本人確認が不十分になる場合があり、これが不正利用を見逃す要因の一つとなっています。また、保険証の有効性を即時的に認証するシステムの開発が検討されていますが、健康保険情報の安全管理には十分な注意が必要であり、慎重な準備と技術的な検討が求められています。

### Evidence
* 2003年の厚生労働科学研究報告書は、「保険情報の誤りや不正使用」の処理にかかる経費が全国で年間1,000億円を超えると推定しています。ただし、この額は主に保険証番号の単純な記載誤りや資格停止後の利用によるもので、「なりすまし」などの不正利用に特化したものではないと追記されています。
* 平井卓也元デジタル相は、紙の健康保険証の本人確認ができないことを理由に、年間約500万件のレセプト(診療報酬明細書)の差し戻しが医療機関で発生していると指摘しています。
* 他人の健康保険証を借りて医療機関を受診する行為は、厳密には「詐欺罪」に該当します。
* 2022年には大阪で、偽造保険証を用いて高額な検査や不要な薬剤を繰り返し請求し、約2億円の不正利益を得ていた組織的事件が摘発されました。
* 公式に把握されている不正利用件数は年間数十件である一方、実際の潜在的被害額は数百億から1,000億円規模に上ると推測されています。
* マイナンバーカードと健康保険証の一体化(マイナ保険証)の推進に伴い、システム改修、医療機関での対応、トラブル対応に多大なリソースが消費されています。