日本のエネルギー政策とインフラ強靱化の課題

判定:正しくない

### Topic
日本のエネルギー政策とインフラ強靱化の課題

### Summary
日本は安全性、安定供給、経済効率性、環境適合を柱とするS+3E原則に基づき、資源制約と災害激甚化に直面しながらエネルギー供給強靱化を推進している。分散型エネルギーリソースの活用や既存インフラの強化が進む一方で、高い化石燃料依存度、電気料金高騰、再生可能エネルギーの不安定性、巨額な投資費用、サイバー攻撃の脅威、住民合意の難航など、多層的な課題に直面している。

### Body
日本のエネルギー政策は、安全性(Safety)を大前提とし、エネルギー安定供給(Energy Security)、経済効率性の向上(Economic Efficiency)、環境への適合(Environment)を図る「S+3Eの大原則」を最も重要な指針としている。日本はエネルギー資源に乏しく、国土が山と深い海に囲まれているという地理的制約を抱えている。

2022年度の日本の電源構成比は、化石燃料が約72%、再生可能エネルギーが約22%、原子力が5.5%であり、化石燃料依存度は2022年時点で88%を占めている。東日本大震災後、原子力発電所の停止により火力発電の稼働が増加し、日本の温室効果ガス排出量は一時的に増加した。近年、2019年の台風15号および19号など、台風やそれに伴う集中豪雨による災害が激甚化する傾向が見られる。

これを受け、2020年2月には、国際資源情勢の変化や地政学的リスクの高まり、自然災害の頻発・被害の甚大化を踏まえ、電力インフラのレジリエンス向上を目的とした「強靱かつ持続可能な電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案」(エネルギー供給強靱化法案)が閣議決定された。この法案では、災害時の送配電事業者の連携強化、プッシュ型ネットワーク整備計画による送配電網の強靱化、災害に強い分散型電力システムの整備、FITに代わるFIP制度の創設、JOGMECによるリスクマネー供給支援を通じた燃料等の安定供給確保などが措置として講じられることになっている。

分散型エネルギーリソース(DER)は消費地に近い場所に存在するため、災害時に電気の供給が滞るリスクが低いというメリットが指摘されている。太陽光発電システムなど外部電源なしに発電できるDERは、地域全体が停電した場合でも電気を利用可能にする。DERの導入により、複数箇所で自立的に電力供給できる仕組みが構築されれば、電力システム全体のレジリエンス(強靭性)強化に寄与する。また、DERは電力の地産地消による送電ロスの低減や、CO2排出量の大幅な削減に貢献し、環境適合性が高いというメリットも持つ。電力インフラの強靱化は、災害時を含めた安定供給と安全性のために重要な取り組みであり、再生可能エネルギーの更なる導入拡大と電力の安定供給、電力インフラの強靱化を実現するため、電力系統の増強、特に地域間連系線の整備が進められている。公共施設への再生可能エネルギー設備等の導入を支援する事業は、平時の脱炭素化に加え、災害時にもエネルギー供給等の機能発揮を可能にする。

東日本大震災においては、中圧管以上の基幹パイプラインや、耐震性等の向上に努めてきた低圧導管網の被害は少なかった。全国の都市ガス事業者による復旧応援態勢が構築され機能したこと、新潟-仙台を結ぶ広域天然ガスパイプラインにより代替供給が受けられたこと等により、発災から1ヶ月強で復旧を完了できた事例がある。石油製品は可搬性・貯蔵性に優れ、ドラム缶に充填し被災地に運び届けることが可能な分散型エネルギーであり、「エネルギー供給の最後の砦」として災害対応に果たす役割が高いと評価されている。全国石油商業組合連合会は、2020年度末までに全国約3万SSのうち半分の1.5万SSに自家発電機を設置し、災害時においても停電時給油を継続する取り組みを進めている。

一方で、日本は化石燃料への依存度が高く、エネルギー自給率が低いという問題を抱えており、2019年時点の日本のエネルギー自給率は12.1%とOECD加盟36カ国中35位であった。東日本大震災以降、原子力発電所の運転停止や燃料価格の高騰などの影響で火力発電の費用が増加し、電気料金は上昇傾向にある。2010年と比べると、2019年の家庭向け電気料金は約22%、産業向け電気料金は約25%上昇している。再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)導入以降、再エネの設備容量は急速に伸びたが、買い取り費用は4.9兆円に達し、一般的な世帯の電力使用量(月400kWh)で賦課金負担は1,592円/月となっており、電気料金高騰の要因となっている。原子力発電所の再稼働は、福島第一原子力発電所の事故により安全性が大きく損なわれた信頼から、地元住民や自治体の同意を得られていないケースがあり、これが化石燃料依存やエネルギー自給率低下を招いている。

太陽光発電や風力発電は天候や季節により発電量が大きく変動する特性があり、日没後や曇天・雨天時には発電量が大幅に低下するため、夕方から夜間の需要ピーク時に供給力として期待できないなど、電力供給の不安定性が継続している。洋上風力発電はポテンシャルが高いとされるが、発電施設や電線などの送電施設のコストが高いことが課題となっている。電力インフラの強靱化には巨額の投資が必要であり、一般財団法人日本エネルギー経済研究所の試算では、世界の需要拡大に対応しエネルギー安定供給を実現するために世界全体で必要な投資額は、2018年~2050年までの累積で7,620兆円(230兆円/年)にもなるとされている。サイバー攻撃は、自然災害やシステム障害と比較して、被害範囲が不可視で全容把握に時間を要し、対応中も攻撃活動が継続し被害が拡大する可能性があり、発生時点と認知時点に大きな時間差が生じやすいなど、意思決定の複雑性を高める。エネルギーインフラへのサイバー攻撃は、国家の存立基盤を揺るがす戦略的脅威である。

日本の都市ガス事業は需要地ごとに分断されており、主要大都市間やLNG基地間を連結するパイプラインの整備が進んでいないため、単独のLNG基地に供給を依存する地域で製造設備が被災し機能停止に陥った場合、長期間にわたりガス供給が途絶するリスクがある。2050年カーボンニュートラルの目標に向けて、第6次エネルギー基本計画で示された2030年度の電源構成見通しは、現時点では達成が困難な状況にある。近年、メガソーラー(大規模な商業用太陽光発電)への反対が目立つようになり、森林伐採などに伴う景観の阻害や土砂崩れなどの災害の懸念が挙げられている。また、2030年代以降に大量の太陽光パネルの廃棄が予想されており、その適切な処理が課題となっている。

さらに、2019年の台風15号による停電では、千葉県全域に及ぶ広範囲の被害発生や倒木による山道の寸断などで、東京電力の被害状況の把握に遅れが生じ、地域全体の復旧見通しの発信に台風上陸から4日間を要した事例がある。2024年12月に国土交通省が公表した「水道カルテ」によると、2022年度時点で料金回収率が100%を下回り、かつ耐震化率も全国平均を下回る水道事業者は全体の約46.5%に上り、特に小規模な自治体で老朽化対応や災害対策の遅れが目立つ。

### Verification
2023年時点の一次エネルギー自給率の推計値はIEA「World Energy Balances 2025」による。
2022年度の水道事業者の料金回収率と耐震化率は2024年12月に国土交通省が公表した「水道カルテ」による。
世界のエネルギー安定供給に必要な投資額の試算は一般財団法人日本エネルギー経済研究所による。

### Supplement
日本はエネルギー資源に乏しく、国土が山と深い海に囲まれているという地理的制約を抱えている。東日本大震災後、原子力発電所の停止により火力発電の稼働が増加し、日本の温室効果ガス排出量は一時的に増加した。国際資源情勢の変化や地政学的リスクの高まり、自然災害の頻発・被害の甚大化を踏まえ、「強靱かつ持続可能な電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案」(エネルギー供給強靱化法案)が閣議決定された。

### Evidence
* IEA「World Energy Balances 2025」 (2023年時点の一次エネルギー自給率推計値)
* 国土交通省「水道カルテ」 (2024年12月公表、2022年度時点の水道事業者の料金回収率・耐震化率)
* 一般財団法人日本エネルギー経済研究所の試算 (2018年~2050年までの累積で7,620兆円、年間230兆円の世界のエネルギー投資額)
* OECD加盟36カ国中35位 (2019年時点の日本のエネルギー自給率12.1%)
* 家庭向け電気料金約22%上昇、産業向け約25%上昇 (2010年と2019年比較)
* FIT買い取り費用4.9兆円、一般的な世帯の賦課金負担1,592円/月 (月400kWh電力使用量の場合)
* 全国石油商業組合連合会 (2020年度末までに全国約3万SSのうち半分の1.5万SSに自家発電機設置)